画像診断って何だかわかりにくいよね

今更なのだけど、「X線検査や超音波検査、CT、MRIなどの画像から診断すること」ということなのだと思う。本当の定義は教科書などを参照して下さい。

ただ、実際に「診断」と言いつつも本当に診断(確定診断)あるいは本当の病名には至らないことの方が多い。例えば腹部のX線検査を見て「脾臓の血管肉腫ですね」とはならない。もちろん画像以外の情報もとてつもなく重要です。性別、年齢、動物種、体重、症状、血液検査などは最低限必要となる。

業界的にそれで問題ないはず。

じゃあ何をやっているかというと、画像からえられた所見や他の情報とあわせて可能性の高い病名あるいは診断名を可能性の高そうな順に並べること。

例えば、胸のX線検査で、肺が白く見えた時に、「肺水腫や肺炎など何が可能性高い」とかをいう。さらに、そこで心臓が大きければ「心臓病による肺水腫の可能性がある」とかいう。

そして、「次にやる検査は、心臓の超音波検査や聴診、心電図検査、血液検査ではないでしょうか」となる。

とても大雑把な例えではあるけど、ほぼ毎日こんなことをやっている。

私の場合は、X線検査と腹部超音波検査を中心にやっているので、やることはそれほど多くないけど、それなりに忙しいのは、とてもありがたいことであると思っている。

私には、CTやMRIなどの膨大な数の画像データを判断するには時間が足りない。

それよりも、どこの病院でも行えるX線検査と腹部超音波検査を中心に行うことが、社会貢献であると認識している。

細かいことを書くと長くなってわけがわからなくなりそうなのでこの辺で

追記として

超音波検査に関してはちょっと特殊で、画像を読むことだけではなく、適切な画像を得るための手技も重要となる。実際には、検査を行っている人がその場で診断しなくてはならず、保存された静止画像の画像記録から判断するのは難しい。

動物(四肢動物)の方向の呼び方

医学では、体の前方とか後方とか頭の方や足の方等を呼ぶときに使うのは、それぞれの方向に「側」を付けて表すことになっている。体の前後方向で、前の方と言う場合腹方向ということから「腹側」といい、後の方の場合、背中から背をとり「背側」という。体の上下方向では、頭の方を「頭側」といい、足の方を「尾側」という。頭では、ちょっと違う表現をするようになっている。さらに脳だけだと更に違う方法が使用されることもある。動物、特に四肢動物でも同様の呼び方が使用されている。

図-1 人の方向

絵を使って説明すると以下の様(図-2)になっている。頭から尻尾までは頭側と尾側で表現するが、マズルから先は吻側となっている。頭でもどこでも背側と腹側という。足に関しては、長軸方向は体に近い方を「近位」遠い方を「遠位」と表現し、前後方向を頭側と尾側で表す。しかし、前肢の場合、手根関節を境にその遠位では前方向を「背側」とし、後ろ方向を「掌側」とし、後肢では足根関節から遠位は、前を「背側」とし、後ろ方向を「蹠側」あるいは「底側」とする。

図-2 犬猫の方法の名称 その1

さらにもう少し追加するので図-3参照。言葉で説明するとわかりにくいけれども、右の方を「右側」、左の方を「左側」、あるものより中心に近いものを「内側」、あるものより外にあるもの「外側」と表現する。

図-3 犬猫の方向の名称 その2

これらの呼び方は慣れてくるとものを的確に表現できるのでいろいろなことで役に立つようになる。特にX線検査の撮影を行う際にも読影を行う際にも絶対に使いこなせるようになる必要がある。

ただ、日本の獣医学では医学で使われている言葉をそのまま持ってきて使用されることも多く、前十字靱帯断裂(本来は頭側十字靱帯断裂)などもその一つ。

犬猫の解剖の本 2022/05

とにかく満足できる犬猫の解剖の本がない。

画像診断に適している解剖の本は、個人的には写真などよりも絵、特に白黒で描いているものだと思う。多くの場合、写真でつくられた本は死んだときの状態をフォルマリンで固定されたものを撮影しているものが多く、本来の臓器の位置関係や形状を維持しているものは少ないと思ったから。そしてカラーである必要は無いと思う。確かにカラーの方がすてきだと思うけれども値段が高くなりがちである。
日本語では以下のものをAmazonで見つけた。
犬の解剖は、過去にあったものもありましたが日本語の解剖用語に問題があるように思われた。新しい本はどうなのだろうか。

日本語では以下のものがありました。

Evans and de Lahunta犬の解剖

やはり、英語の方が新しいし安いですよね。Kindle版もあります。

Miller’s Anatomy of the Dog

犬の解剖カラーリングアトラス

翻訳していている先生が大学先生なので、解剖用語が日本で標準のものとなっていると思います。値段が安い。

図解 猫の解剖アトラス

内容は知りませんが、絵はきれいみたいですね。

呑気

これをなんと読むか?

例文で見た方がわかりやすい。

1. 彼は呑気だ。

2. この猫は呑気している。

1.はもちろん「のんき」と読む。意味は、「のんびりとしていること」というような意味になる。

2.は?

 

「どんき」と読む。意味は・・・「空気やガスを飲み込むこと」となる。そのため「どんき」と読む人は医療関係者であることが多い。

犬や猫は、基本的に鼻呼吸である。鼻で呼吸ができるうちは何も問題がない。犬はパンティングするので、これをしているときは口呼吸である。

でも、鼻炎なんかを起こして鼻づまりになると、口で呼吸しなくてはならない。そうなると、口呼吸が上手くできない犬や猫は、空気を幾分か飲み込んでしまうのである。すると、食道の中や胃まで空気で一杯になってしまう。さらに、犬や猫はゲップの上手ではないので、胃から少しずつ空気を後へ送って小腸や大腸にガスが充満してしまう。空気はほとんど吸収されないので、おならになって出る以外では、胃腸に溜まってしまう。これで、元気がなくなったり食欲不振にったるすることもある。

呑気の原因は、鼻づまりだけではなくパンティングだったり歯や口の中の病気などで唾液を飲み込むことで、ガスが消化管の中に流れ込んでしまう。

人では呑気症とか空気嚥下症といわれていて、胃の不快感や痛み、お腹の張り、げっぷやおなら、おなかからの音なんかが見られる。

呑気症でAmazon見ると

X線グリッド につて

X線グリッドの図

X線グリッドとは、「ブレンデ」とか「バッキー」とか呼んでいる人もいますが、正式な名称はX線グリッドでいいと思います。

このX線グリッドとは、カセッテの上に載せて使用する板状の物です。この役割は、X線検査時に発生する二次散乱線を防止して、一次X線のみのクリアーな画像をつくるための物です。構造は簡単なもので、X線を透さない薄い鉛の板とX線を透すアルミや紙、木など薄い板を、向後に並べ、窓のブラインドと同じよう一定の方向からの光(この場合一次X線)を通すことで、生体にあったって生じた散乱線がフィルムへ到達しないようにしているものです。

「ブレンデ」とは、X線グリッドの別名でありますが、X線グリッドをさして呼ぶ呼び方としては一般的ではないかもしれません。「バッキー」という言葉は、X線グリッドの分類の時使われる言葉で、リスホルム・ブレンデ(静止形)とバッキー(ブッキー)・ブレンデ(移動型)という分類の時にこれらの言葉が使用されます。


使用するときは、撮影する対象物が10cmより厚い時となります。これは生体の厚みが厚くなるほど散乱線を発生するため、許容できる厚みが10cmということです。ただし、10cmを超えても、骨関節や頭部の撮影には使用しない方が良いと考えます。

ここで注意して欲しいのは「10cm以下の部位には使用する必要がありません」という表現より、「10cm以下では使用しない」という方がよりかも知れません。そのため「10cm以上の部位にグリッドを使用しましょう」という考えの方がよりと思います。グリッドを使用しないで済むならそれに越したことはありません。せっかく撮影したフィルムに細かい線が入ってしまうからです。

近ではDR(digital radiography)やCR(computed radiography)が普及してきて、グリッドなしでもコンピュータ処理によって散乱線が補正されて、より良い画像が得られるようになりました。 また、得られた画像が人の目でも見やすくなるようグレースケールの修正やエッジなどの強調も行われていて、時にX線フィルムではあまり見られなかったものが見られるようになっています。(詳しいことはまた改めて)

一番の問題点は「X線グリッドを使用すると線が入る」と言うことです。骨格や関節の細かい構造を見るためにはこの線が邪魔になります。そのため、グリッドを使用して撮影された場合、関節周囲の細かい骨変化や骨の骨膜反応などが確認できないこともあり、正確な読影ができないこともあります。
「散乱線を減らすためにはX線グリッドは必要ですが、骨関節や頭部の撮影には使用しない」と言うことをお忘れなく。

※ 2022/10/12修正


参考HP:
http://www.jichi.ac.jp/usr/radh/admnradh/kennsyu3.htm

以下の本も参考にしてください。

低線量の影響

低線量(0.5~2Gy)の放射線被曝であっても、脳卒中と心疾患による死亡リスクが高まる
と言う研究結果があるらしい。多分低線量被爆とはX線検査のレベルではなくて、コンピュータ断層(CT)検査のことなのでしょう。日本の医療では頭部や胸部などの検査は頻繁に行われるようになってきているようなので、脳卒中と心疾患に関するリスクが上昇するというのは致命的であると言えるのでしょう。通常、CTの一般検査での被爆が1Gy未満(0.2Gy未満の被爆が86%とほとんど)であることを考えると、1Gy未満の被爆が脳卒中や心疾患のリスクがあがるのかという関するデータは重要なことになる。
研究自体はデータの関係上いわゆる1Gy未満に限ったものではないので、低線量被爆のどの程度の範囲でそしてそれぐらいのタイムスパンでのことから来るリスクなのかさらなる研究に期待と言うことだね。
動物業界ではあまり関係のないことだったね。
でも、低線量の被爆でも結構人体に影響があると言うことを知っておく必要があると思う。

XP

XPというといまでは一般の人ではWindowsXPのことであると考える人も多いと思う。しかし、医療関係者あるいは獣医療関係者XPはX線検査あるいはそのフィルムことであったりする。だから、カルテにXPと書いてあるとX線検査をしたと言うことになる。このXはX線のXであり、PはPlateから来ていると言うことらしい、かつてX線検査のフィルムはプラスティックであり、その前はセルロイド、更に前はガラスであった。ガラス表面に、乳剤を塗って使用していたらしい。そのときのガラスをPlateと言っていて、XPと言われるようになったと言うことだそうである。
日本では一般ではX線検査のことを、いまだにレントゲン検査と言う人が多い。英語では、Roentgenという言葉は通常使用せず、RadiographyあるいはまれにX-rayという表現を使用する。「Roentgen」とは言わずとしれたこのX線の発見した博士の名前であるが、この博士の発見した放射線を「Roentgen」という表現はせず、「X-ray」あるいは「Xray」を使用している。(Roentgen博士もX-rayと呼んだし、X-rayと呼ばれることを望んでいたようである。)そして、このX-rayを使用する検査をRadiographyと表現する。
このRadiograpyはRadio-(放射線)を使用した-graphy(写真)であることから造られた言葉である。ちなみに通常の写真は英語でPhotographであり、このPhoto-は光のことでありそれに-graphをつけてるくられた言葉である。ちなみに顕微鏡写真は、Micrographという言葉が使用される。電子顕微鏡写真は、Electromicrographtとなる。
「レントゲンを撮りました。」なんて言われるとちょっと寂しい。でも、「X線撮りました。」と言われても違和感がある。たぶん「X線検査を行いました。」と言うのが正解なのだろう。それでもやはりちょっと的外れのような気がするが・・・。その検査を適切に表す言葉がないのが実情である。英語では「take a radiograph」でOK。(Radiogramという表現もある) 私の師匠1号は、X線撮影をしてもらうときによくふざけて「Nuc’em」(NucはNuclearという核を意味していて’emはいわゆるThemのこと、あわせると放射線を浴びせろと言う意味になると思う)と言っていた。確かに日本語で「エックス線」と言うより「レ線」と言った方が言いやすいね。
とある動物病院では、撮影回数を表記するのに「曝射」という言葉を使用している。そのため、カルテに撮影回数か表記するに「~曝射」だか「~曝」と書いている。間違えて「爆」って書いちゃいそう。いずれにしても簡素化していくカルテ表記もある意味逆戻りだなーってかんじする。ちなみに英語ではshotを使用するので「~shot(s)」って書いておけば少しは簡単のような気がする。使用したフィルム数と撮影回数を表記しておくので 2 films 4 shots とあればたいがい2枚のフィルムをそれぞれを分割して使用して4回「曝射」したことがわかる。