そうえいばBNCT

 今年になって中性子捕捉医療用加速器が開発されたというニュースを聞いた。(がん細胞のみ破壊 加速器BNCT 今夏、治験開始へ 産経関西)BNCTとはホウ素中性子捕捉療法(ボロン中性子捕捉療法)のコトである。ホウ素に熱中性子(エネルギーの低い中性子線)を当てるとホウ素がリチウムの原子核とヘリウム原子核(アルファー粒子)に壊れる。これらリチウム原子核とヘリウム原子核(アルファー粒子)は細胞内では5から9マイクロメーター程度しか届かないため、このホウ素を癌細胞の中に入れ熱中性子を照射すれば癌細胞(一個分)のDNAをぶった切ることができ細胞を殺すことができる。現時点での応用は悪性の脳腫瘍と皮膚の悪性黒色腫である。このニュースのすごいところは、BNCTは今まで原子炉がある場所でしかできなかったことが、原子炉がない病院内で中性子の照射が可能になったと言うことで、BNCTをどこでもできると言うことである。
 実はBNCTは大学院(アメリカで)の時に研究していた題材である。BNCTのDDS(ドラッグ・デリバリー・システム)いわゆるどうやってホウ素を腫瘍細胞に届けるかと言うことを研究していた。そのため、当時はいろいろと文献を読みあさっていたものであり、非常に懐かしい思いである。実はBNCTは日本ではかなり実績があり、治療成功症例が多く発表されていた。しかし、これらの成功例もBNCTをやっていた先生の治療法がさじ加減で行われていたりとか記録が十分されていなかったりなどの問題点が多く十分な評価を受けることができなかった。でも、その日本の先生のおかげで世界的にBNCTは治療効果があると認識されるにい至ったのは事実である。
 昔は比較的聞いたこの治療法も最近ではあまり聞かなくなってきたと思っていた。たぶんパラメータが多すぎで経費がかかりすぎなどの理由で臨床例が増えなかったので研究には不向きと言うことになって臨床的に???と言うことになっていたのだと思う。でも、病院でBNCTができるようになると、経費が下がり症例数も劇的に増えるものと期待することができる。これからのBNCTの発展に期待したいと思う。研究していた頃は犬の脳腫瘍のBNCTをやっていたけれども、日本でもやってみるのはおもしろいかもしれないねー。
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ちなみにBNCTは Boron Neutron Capture Therapy となります。
京都大学原子炉実験所/医療照射

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