丑三つ時

 自分では送られてきたX線写真をサッサーと読んでいくつもりでも、実際にはそれほど簡単なことではないのが現状である。昼間で往診などで外出している時以外は病院に駐在しているために、保定の手伝いや電話番、受付などいろいろと雑用が入ってきて、それをかわしながら超音波検査の診断書やX線写真の読影を行う。それに、このモニターは小さいしパソコンの環境も良くないし愚痴を言ったらきりがない。夜は夜で、なかなか自分の仕事まで行き着かない。みんなが寝静まった後から、ひっそりと自分の部屋にこもってまず始めるのがお部屋の掃除、それから書類の整理、そして仕事(超音波検査の診断書や送られてきたX線写真の読影)を行う。実際に仕事に就くのが丑三つ時ってところでしょうか。そりゃもう眠い。でも本当に最近結構多いのが、みんなが寝るのを待っているうちに居眠りして丑三つ時なんてことも。悪循環だね。

9.11

G0
 NYでテロがおきてからもう5年にもなってしまった。アメリカ本土で戦争も起きたこともない人たちにとってこのテロはとっても驚きや恐怖であったことだと思う。かつて原爆を落とされた我々も戦争を経験したことのない世代になった今、もし同様のことがおきたらアメリカ国民の反応とはさして変わらないものであるのだと思う。(サリン事件あったけどね、あれはれっきとしたテロでしょう。ただテロリストと対象が国内だっただけ。それはハルマゲドン!?をおこすためだったっけ?) 結局、世界貿易センタービルに登る機会はないままになってしまったのが悔やまれる。以前行ったときは下から眺めただけであった。世界貿易センタービルのてっぺんからの眺めはさぞかし良かったのだと思う。高校の時の同級生はNYで仕事をしていて、彼の友人・知人が何人かこのテロで亡くなっているという。直接の知り合いではないものの多くの人がこの場所で死んだ。この世界貿易センタービルがあった場所は、グランド・ゼロ(Ground Zero )と言われている。このGround Zeroとはかつて原爆が投下され爆発した地点のことを本来は指していた。現在では、この世界貿易センタービルなど重大な事故や事件が起きた場所の中心部を呼ぶ。まったく人に原爆落としておいて自分が(原爆に比べ)この程度被害でグランドゼロとはと思わざる終えない。テロ当時のアメリカ合衆国大統領の対応が問題になっていたが、この人は結局これでアルカイダとの関わりを疑ってイラクに戦争したけど今になって何もなかったなんて報告を受けていったいなんて言うつもりなのか。あれはあれで良かった。サダムフセイは結局始末しなくてはいけなかったから、そして、何れはイラクもつぶさなくてはいけなかったから、それはそれで良かったなんて言うのでしょうか。日本の首相はイラクとの戦後大量破壊兵器が見つからないときの発言として「フセイン大統領が見つかっていないから、大統領は存在しなかったと言えますか。言えないでしょう。大量破壊兵器も私はいずれ見つかると思う」なんて言っていました。こんな発言をする人を信じてられる国民は幸せだなと思う。だってサダムフセインには会ったことがある人がいるだろうけど、イラクの大量破壊兵器を見たことがある人はいないじゃあないですか。きっと大規模なテロにあっても、こんな調子で日本の危機も簡単に切り抜けていくのだと思う。
 9.11で思いついたことをまとまりなく書いてしまった。とにかく、たくさん亡くなった人たちの冥福を祈りつつ、たいしたことはできないけれどこんなことが二度とおきないことをただひたすら願う。

頭のX線検査

Head
 読影の中でも難しいのが頭部であると考えている人が多い。確かに認識する構造が多いために頭部あるいは頭蓋骨の各解剖を認識していくには時間がかかる。さらに重なる構造も多く目的とする部位を確認するためにはただ目的に応じたポジションが必要になる。それに、目的としたポジションがとれたにしろ、その中から目的とした構造を探し出すのは難しいことが多い。
 通常ルーチンに必要になるポジションは、ラテラル像とV-D像あるいはD-V像である。頭部のX線検査のときに丁寧に、4方向から撮影してきてくれることが多いけど、2方向で十分である。たぶんそれは「患部をフィルムの近くにいて撮影したほうがよい」なんて言うことをどこかで聞いているからなのか、それとも、別の方向から撮影していくことで何か別のものが見えるかと思うからなのであろうか。頭部に関して読影するときはそんなのどうでもいい。得られる情報はほとんど変わらないし、たぶんそれほど精密に情報を引き出すことはできない。特に頭部の場合には、この程度の大きさに関して拡大効果とか含気部の移動なんてことは必要ないのである。ちなみに、この拡大効果とは、フィルムから離れたほうが拡大して見やすいあるいはぼやけて見にくくなるという効果のこと。そして、含気部の移動とは、肺での左右のラテラル像で転移を確認するために使用するもので、下側に来た肺よりも上に来た肺のほうが含気して、空気のデンシティーと軟部組織のデンシティーの差がでて小さい構造でも確認しやすくなり、転移などの発見には適しているというものである。そんなことから、頭の構造を認識するに関して、ラテラル像でも左右両方は必要ないし、V-D像あるいはD-V像がどちらかあれば十分である。
 しかし、頭部で最も重要なのはポジションである。「正確でなくては読めない。左右対称でなくては読めない。kVpなどの撮影条件が適切でなくては読めない。」のだ。そのためには麻酔や鎮静が必要となることも多い。通常X線撮影システムでもCR装置でも、どんな方法でもかまわないけれども、ポジションが重要である。頭部の読影が難しいと思っているならまず自分が撮影した頭部X線検査のフィルムのポジションや撮影条件を再検討したらどうでしょう。ちゃんととれていれば読影はそんなに難しくないはず。そんなに解剖知らなくても左右の対称性で見ていけばだいたい大丈夫。でなければX線解剖学の本と照らし合わせながらじっくりと時間をかけてみれば、ほとんどの構造は認識できるはず。でもどうしても、もしちゃんとしたポジションがとれないなら、仕方がないから、コンピュータ断層(CT)検査やればいいんじゃなーい。