頭のX線検査

Head
 読影の中でも難しいのが頭部であると考えている人が多い。確かに認識する構造が多いために頭部あるいは頭蓋骨の各解剖を認識していくには時間がかかる。さらに重なる構造も多く目的とする部位を確認するためにはただ目的に応じたポジションが必要になる。それに、目的としたポジションがとれたにしろ、その中から目的とした構造を探し出すのは難しいことが多い。
 通常ルーチンに必要になるポジションは、ラテラル像とV-D像あるいはD-V像である。頭部のX線検査のときに丁寧に、4方向から撮影してきてくれることが多いけど、2方向で十分である。たぶんそれは「患部をフィルムの近くにいて撮影したほうがよい」なんて言うことをどこかで聞いているからなのか、それとも、別の方向から撮影していくことで何か別のものが見えるかと思うからなのであろうか。頭部に関して読影するときはそんなのどうでもいい。得られる情報はほとんど変わらないし、たぶんそれほど精密に情報を引き出すことはできない。特に頭部の場合には、この程度の大きさに関して拡大効果とか含気部の移動なんてことは必要ないのである。ちなみに、この拡大効果とは、フィルムから離れたほうが拡大して見やすいあるいはぼやけて見にくくなるという効果のこと。そして、含気部の移動とは、肺での左右のラテラル像で転移を確認するために使用するもので、下側に来た肺よりも上に来た肺のほうが含気して、空気のデンシティーと軟部組織のデンシティーの差がでて小さい構造でも確認しやすくなり、転移などの発見には適しているというものである。そんなことから、頭の構造を認識するに関して、ラテラル像でも左右両方は必要ないし、V-D像あるいはD-V像がどちらかあれば十分である。
 しかし、頭部で最も重要なのはポジションである。「正確でなくては読めない。左右対称でなくては読めない。kVpなどの撮影条件が適切でなくては読めない。」のだ。そのためには麻酔や鎮静が必要となることも多い。通常X線撮影システムでもCR装置でも、どんな方法でもかまわないけれども、ポジションが重要である。頭部の読影が難しいと思っているならまず自分が撮影した頭部X線検査のフィルムのポジションや撮影条件を再検討したらどうでしょう。ちゃんととれていれば読影はそんなに難しくないはず。そんなに解剖知らなくても左右の対称性で見ていけばだいたい大丈夫。でなければX線解剖学の本と照らし合わせながらじっくりと時間をかけてみれば、ほとんどの構造は認識できるはず。でもどうしても、もしちゃんとしたポジションがとれないなら、仕方がないから、コンピュータ断層(CT)検査やればいいんじゃなーい。