メールでの依頼

 メールでの依頼(DICOMデータは除く)は直接フィルムを送ってくるより安い値段で読影をしている。たいがいの場合、X線フィルムをデジカメで撮影してから、メールに添付して送ってくるのである。安く設定しているのは、多くの場合ちゃんと読めないことである。骨変化の細かい部分や肺の陰影などは十分に判定ができないことが多いのである。そのようなわけで、X線所見もちゃんと書くことができず診断もままならないことが多いので、安く値段を設定している。まあいわゆるコメント程度ということです。デジカメではなくて透過原稿が読めるスキャナーで読み込めば十分読めることがある。でもこれではとてつもなく大きなファイルになるので、今の私のメールボックスには入らない。(ちょっとしたデジカメの画像でもメールボックスに入らないというのに)もうちょっと小さくしてくれればいいのにとも思う。
 フルのカラー写真では大きいので白黒写真にしてくれればもう少し小さくなると思う。でもこれがなかなかうまくできる方法がない。通常ある画像ソフトではカラー画像を白黒画像にしてくるような機能がない。でも見つけました。このソフトでは、複数枚の画像でも一気に変換可能なのである。もう一つの機能は、DICOMデーターを一気に通常の画像ファイルにしてくれることである。
XnView 外国製ですが日本語対応していてしかもフリーソフトなのです。
窓の杜からのダウンロード   http://www.forest.impress.co.jp/lib/pic/piccam/picviewer/xnview.html
 もう一つ、これは別に今回のトピックとは関係ないけれども、小さいDICOMビューアーがある。これは、ファイルをUSBメモリーの中に入れておいても使えるので、どこに行ってでも、DICOMファイルを開くことができるものである。
ezDICOM 外国製で英語のみ対応ですが軽く使えます。もちろんフリーソフトです。
専用サイトからのダウンロード http://sourceforge.net/projects/ezdicom/
それでは秋の夜長をお楽しみください。

右側にある本のリスト

 携帯電話で見ている人は見えないけれど、このコラムの右側には本のリストがある。この本のリストを更新した。本当はもっと日本語の本を入れようと思ったけれどなぜかアマゾンの検索では引っかかってこない。なんと寿命の短いことか。出版してすぐ絶版になってしまうことが原因なのか。だとすれば出版社の本に対する思い入れのなさが伺えるのでしょうかね。まあこの業界で本を売ってもベストセラーにはならないからね。めちゃくちゃ値段が高いしね。翻訳も今ひとつ意味がわからないこともあるしね。

エコーってEBM向きではない

 人に教えようとしていろいろ調べ出すと最近何かとEBMって言葉にぶつかる。知っての通りEvidence-Based Medicineということで根拠に基づく医療ということである。どうしてもこのEvidenceという言葉に引っかかる。根拠ということで、どの程度までが根拠でどの程度からがそれ以外なのかということである。10年以上このての仕事に携わっていると昔学んだり読んだりしたことやいろいろな経験がごちゃ混ぜになっていて、根拠なのかどうなのかよくわからない。たとえそのことにEvidenceがあるのかと聞かれてもよくわからないようなことが多い。「X線検査で心臓の大きさが大きいことと心疾患がある」と言うことで過去に論文が出ていたのか、「X線検査で腎臓の大きさの判定に第2腰椎が使用される、また、心臓の大きさの判定にVHSが使用されるが、そもそも、動物の大きさと脊椎の長さの相関関係にEvidenceがあるのか」などなど・・画像診断はいわゆるEBM的ではないかもね。
 さらに、画像診断では、画像に見られる変化を言葉で表現できないと論文でも学会でも発表できない。肝臓の実質の変化を粗造であると表現しても十分ではない。でもその粗造感を「均一に不均一」とか「不均一に不均一」などと表現していても、そもそも正常な肝臓実質が適切に表現できていないので発表できるに至らないのが現状である。「肝臓実質で低エコーのつぶつぶ感が眼に残るような感じだと浸潤かな」とか言っているのでは全然だめである。難しいね。これじゃあEvidenceにならないねえ。と言いつつ、これでは本来のEBMの解釈ではないですね。
 獣医師の中にもEBMについてちょっと思い違いをしている人がいるような気がするので使い方は十分に注意しましょう。特にEvidenceの使い方が難しいですね。なにをもってEvidenceとなるのか十部に検討しないうちからEBMという言葉が流行ってしまってイメージばかりが先行してしまって、もやはLOHAS状態ではないですか。だったらEBMも早いうちから登録商標にしてしまえばよかったのにね。
参考までに(よく理解しましょう)
EBMについて(http://spell.umin.jp/EBM.htm)
EBMのWiki
LOHASのWiki

OFA

 今日、過去に股関節のX線を読んだことがあるという犬の飼い主から電話がかかってきた。OFAの写真をうまく撮ることができる先生は知りませんか?という質問であった。ちょっとキレそうになった。というよりちょっとキレた。全くこの人はOFAをなんだと思っているのか?OFAのフィルムでうまいへたがあったら診断なんてくそ食らえである。ちまたでは、どこそこの動物病院で撮影するとOFAを通ることができるとかいうことがあるようである。そんなどこがよくてどこがダメなんてあってなはならない。レベルが低すぎである。そういうことに便乗している獣医師がいるということなのだろうか?(だって、ちょっとした力加減でも股関節の緩さが変わるかもしれないしね!ってわけないじゃん!!)とっても不思議である。ある意味、OFAのポジションさえもできない動物病院があるということなのかもしれないね。全くこの世の中どうなっちゃっているんだろう。
いったいどうやって電話番号を調べたんだ?

enthesophyte

enthesophyteとは・・・
 あまり知られていない言葉だけれども、耳で聞いて何となく意味はわかっていたのだけれど、スペル(つづり)がわからなくて辞書も引けなくて困っていた。結局、見つけたのはDonald Resnickの”Bone and Joint Imaging”という本の中である。この本は人の医学向けの本であり、本1冊が丸ごと骨と関節のX線診断について書いてある。この人の書いた本には”Diagnosis of Bone and Joint Disorders“という本がある。これは全部で5巻からなり、内容はもちろん全て骨と関節のX線検査についてである。これは、セットでも売られているが軽く10万円を超えるため手が届かない。この本の著者の中にGen Niwayamaという人の名前が載っている。アメリカではとっても有名らしく、このDr. Resnickとよく本を書いている。あまり情報がないためにどんな人か知らないけれど、多分日本人だろうと思う。こんなところで日本人が活躍しているのを見るとちょっとうれしい。
 結局日本語では何という言葉なのかよくわからない。「靱帯付着部骨棘」、無理に訳すとこんなところなのでしょうかね。意味は見たとおり靱帯の付着部にできる骨増生のことであり、先の本には詳しく書いてある。実際には、靱帯の付着部だけではなく腱や筋、関節包の付着部でも同様の変化が見られることは知られている。関節のX線検査では重要なポイントとなるために、欠かせないことであるはず。しかし、調べた辞書(ドーランドやステッドマン)にも載っていないしそれほど重要視されていないのかもしれないね。読み方もよくわからないけれど「エンシーゾファイト」というらしい。知っていると何かと便利かもしれません。それとも古い考え方なのか・・・
 例えば、関節炎で骨棘が見られることがあるがこれはenthesophyteの形成によるものであることが多い。また、筋付着部で骨が粗造になっていることがあるが、これはenthesophyteに関係している。知っているとわかりやすいのにね。

Bone Identities

Skull
 さきほど仕事(勉強会)から帰ってきた。仕事とはいえこんな頭蓋骨などの骨の山を約1頭分を箱に入れて深夜に持ち歩くのは気持ちのいいものではない。なんかのきっかけで警察に職務質問されたら挙動不審になりそうでできるだけ避けたいという気持ちになる。
 骨格標本を持ちましょう。特にわたしの持っているものは本当の犬(グレート・ピレニーズ)の骨格である。X線読影では骨格標本は欠かせない。特に骨関節系のフィルムの読影は骨に触りながら読むのがいちばんである。今ではいろいろなことで手に入りにくくなって来ているものの、何とかして手に入れてもらいたいと思う。自分でつくるもの方法の一つである。作り方は、ポリバケツを水でみたして、入れて・・・などなどいろいろあるものの今はそれはどうでもよく書きません。
 骨格標本の良いところはいくつかある。まず、骨の細かい変化たとえば筋肉の付着部や栄養孔の形状・位置などX線写真で出てくるわけのわからない線や増生みたいな場所をその部位の骨を触りながら実際どうなっているのかを見て触って確認できることである。よく説明で使うのが橈尺骨間の骨幹腱の付着部であり、この部位のがとても造成しているように見えることがある。また、骨を暇なときに眺めたり触っていると思いがけない骨の形に感心してしまうこともある。よく感心するのは、肘関節の骨の合わさり方である。3つの骨が確かにぴしっと合わさるのである。また、橈骨と尺骨の遠位(手根部近く)で接しているその接し方なんかもちょっと微妙で感心するところである。また、老齢動物の骨格標本だとどんな病気があったのかとか病気の変化を見ることができる。私の持っている骨格標本は、肩の離断性骨軟骨炎や股関節形成不全などがあり、頭部では歯槽骨の感染症などを見ることができる。
 そんなわけで、骨格標本を持ちましょう。でも組み立てたものでは意味がない。バラバラの状態で持っている必要がある。これは、関節の内部構造などを見ることができるのがポイントである。その他に実際に骨をあわせてみて関節の動きの再現などもがんばればできるはず。左右の骨の違いを並べてみることができる。など、バラバラの状態の方がよいことがいっぱいある。
 では、明晩も骨を片手にウイスキーを・・・

頭のX線検査

Head
 読影の中でも難しいのが頭部であると考えている人が多い。確かに認識する構造が多いために頭部あるいは頭蓋骨の各解剖を認識していくには時間がかかる。さらに重なる構造も多く目的とする部位を確認するためにはただ目的に応じたポジションが必要になる。それに、目的としたポジションがとれたにしろ、その中から目的とした構造を探し出すのは難しいことが多い。
 通常ルーチンに必要になるポジションは、ラテラル像とV-D像あるいはD-V像である。頭部のX線検査のときに丁寧に、4方向から撮影してきてくれることが多いけど、2方向で十分である。たぶんそれは「患部をフィルムの近くにいて撮影したほうがよい」なんて言うことをどこかで聞いているからなのか、それとも、別の方向から撮影していくことで何か別のものが見えるかと思うからなのであろうか。頭部に関して読影するときはそんなのどうでもいい。得られる情報はほとんど変わらないし、たぶんそれほど精密に情報を引き出すことはできない。特に頭部の場合には、この程度の大きさに関して拡大効果とか含気部の移動なんてことは必要ないのである。ちなみに、この拡大効果とは、フィルムから離れたほうが拡大して見やすいあるいはぼやけて見にくくなるという効果のこと。そして、含気部の移動とは、肺での左右のラテラル像で転移を確認するために使用するもので、下側に来た肺よりも上に来た肺のほうが含気して、空気のデンシティーと軟部組織のデンシティーの差がでて小さい構造でも確認しやすくなり、転移などの発見には適しているというものである。そんなことから、頭の構造を認識するに関して、ラテラル像でも左右両方は必要ないし、V-D像あるいはD-V像がどちらかあれば十分である。
 しかし、頭部で最も重要なのはポジションである。「正確でなくては読めない。左右対称でなくては読めない。kVpなどの撮影条件が適切でなくては読めない。」のだ。そのためには麻酔や鎮静が必要となることも多い。通常X線撮影システムでもCR装置でも、どんな方法でもかまわないけれども、ポジションが重要である。頭部の読影が難しいと思っているならまず自分が撮影した頭部X線検査のフィルムのポジションや撮影条件を再検討したらどうでしょう。ちゃんととれていれば読影はそんなに難しくないはず。そんなに解剖知らなくても左右の対称性で見ていけばだいたい大丈夫。でなければX線解剖学の本と照らし合わせながらじっくりと時間をかけてみれば、ほとんどの構造は認識できるはず。でもどうしても、もしちゃんとしたポジションがとれないなら、仕方がないから、コンピュータ断層(CT)検査やればいいんじゃなーい。

Dr. Fox の Thoracic Radiology

 はじめてJAHAの国際セミナーに行ってきました。(正確には学生の時以来か・・・)他人のセミナーを聴くのは本当に久しぶりで大変興味深かったです。心臓の専門医であるFox先生はアメリカ・ニューヨーク・マンハッタンのAMCに在籍しています。救急医療も興味の分野だそうです。
 心臓専門医の人の胸部X線は放射線専門医のものとどう違うのかが私にとってのトピックです。時間は朝9:30からごご5:30までの長丁場でした。結果的に大きなは違いはありませんが、私と血管パターンについての認識がにていたと言うことでした。血管パターンについては、私の講義ではほとんど取り上げません。あまり臨床でや役に立たないからです。Dr. Fox も心不全と血管に変化は一致しないと言っていました。さらに、アメリカの放射線の授業では血管パターンについていろいろ教えるから良くないとも言っていました。また、しいて違いを言うならば、放射線科の先生よりもう少しつっこんで心臓の形態について読んでいるようにも思えます。おかげでちょっと新しいことも思いつくに至りました。思いついたことは今はまだちゃんとまとまっていないので書きません。でもちょっといろいろと質問したいことがあったけれどJAHAの雰囲気がよくわからないのでやめといました。
 残念ながら時間の約束があり最後までいられませんでした。最後の方に猫の肺気腫について話がありそうだったのにね。
 やっぱりたまには他人の話を聞きに行かなくてはいけないと痛感してしまいました。

The Way He Thinks

彼が考える方法
私が放射線科の研修医をやる前に、いわゆるインターンみたいなことをちょっとの間だけやった。どちらかというとやらされたに近い。小動物から馬、産業動物などといろいろな部署を回った。そのとき、小動物内科の先生で神経学専門のDr. M Mooreという先生についたときである。Dr. RD Sande(師匠2号)は彼のことをさしてこういった。「彼は記憶力だけではなく頭がとってもよい。彼について学ぶことはいろいろあるが、重要なのは彼のThe way he thinksを学んでくることである。」ここで言うThe way he thinks.とは単に彼が考える「方法」というものではなく、彼が考える思考経路ということで、それを学んで来いと言うのである。果たしてそれはどういうことなのか。
臨床では知識や経験はとも重要なことである。本や雑誌、インターネットなどあるいは自分のやっていることを長い間繰り返していくだけで知識や経験は増やすことはできる。しかしそれだけでは臨床でよりよい解決方法を見つけるためには十分ではない。そこに足りないのは、情報の選択やよりよい答えを出すために思考経路である。しかし、このことは簡単に説明できるものではない。思考経路とはその人が複雑な問題にぶつかったときにどのようにそれを解いていくのかということであり、それを説明するのは難しい。それが症例であった場合、問題はより複雑になっていて簡単には説明できない。しかし、できる獣医師はなんだかんだと言って問題を解決していく。なぜその結果が導かれたのかそんな思考経路を知ることが重要なのであう。残念ながら現日本ではなかなかこのような経験を積むことはできない。でも、いろいろできる先生たちと意識して話しているとそんな思考経路は何となく見えてくるときがある。そんなことでいろいろ学ぶことも多い。
The way he (she) thinks.を学ぶ自分なりの方法を見つけよう。
一歩進んだ獣医師になれるかもしれない。

Damnit!!

「こんちくしょう!」といったところの意味。
fromねっとげーむの英会話 罵倒編
もっといろいろ罵倒したい人は自己責任で参照して・・・
でも実生活では使用しないようにしましょうね。
いきなりこれを(これじゃなくてもほとんどの罵声語)我々のようなネイティブじゃない人が使うと皆さん引いてしまいます。
知っている人もいると思う。
知らない人は何のことだかよくわからないことと思う。
実は、診断において鑑別診断のリストを作るときに使われる。
DAMNITの内容は多少人によって違う可能性もあるけれど気にしないで進めていく。
知っている限りではDAMNNIITTとなる。
D は Degenerative で退行性疾患
A は Anomaly で先天性奇形性疾患
M は Metabolic で代謝性疾患
N は Neoplastic で腫瘍性疾患
N は Nutritional で栄養性疾患
I は Infectious で感染性疾患
(I は Inframmtion で炎症性疾患)
I は Iatrogenic で医原性疾患
T は Toxic で中毒性疾患
T は Traumatic で外傷性疾患
画像診断などで見ているものがなんだかわからなかったら頭の中でリストを順番に言っていく。
お経のように、ある時は祈りのように
ただ、DAMNITと
フィルムを読むときに初心者には役立つと思うサイトも見つけた。
私のWSU師匠4号 Dr. DD Barbee が作成したページだ。
学生向けに作成したものか?
Radiology Film Reading Team Training Manual
(もうなくなっていました。2005年12月7日現在)
で、この文章で何が言いたかったのかよくわからなくなってきたのでDAMNIT、DAMNIT・・・

There’s more ways than one to kill a cat.

neko
「何かを成し遂げるにはさまざまな方法がある。」
from ことわざに見る猫<英語圏>
私はどちらかというと “There’s more than one way to kill a cat.” という言い方で記憶している。WSUのDr. RD Sande (私の師匠2号) がよく言っていたのを記憶している。
本当に猫を殺すことを連想するとひどいことになってしまうがそんなことが言いたいのではない。なぜ猫か?なんてことを議論すると時間がかかりそう。
それは多分「猫は悪魔の使い・魔女の化身」だから・・・
熱心に議論することは重要であると考える。結果が出るまでいろいろ話し合うのも重要なこと。
でも結果がでなくてはあまり意味のないこと。
何か始めるにはとりあえずできることから立ち止まってはいられません。
一つのことにこだわって立ち止まるよりは前に進みましょう。
「ほにゃらら」という病気は「ほにゃほにゃらら」という方法でしか直りません。そのようなことは多くの場合なくて、個体差やさまざまな状況によって変化するものである。本来、医療自体がそのようなものであると思う。
一つのことにこだわらず、悪い言い方をすると行き当たりばったりとか試行錯誤などになってしまうけど、本来あるべき獣医学的に知識や経験があれば適切な方向に進んでいくはず。
行き詰まったら “There’s more than one way to kill a cat.” と考えましょう。
注)首は絞めていません。